ストーリー

天遊琳タケル 一刀流のパブリックオーダー #1

文/河端ジュン一

 天遊琳は、古くは武家の血筋として知られた姓だ。現代では、その苗字を持つ者の多くが警察職員として働いている。
 タケルの父と兄も同じく八幡学園都市署――通称・八学署に勤めており、日夜、街の治安を守るために奮闘している。
 幼い頃のタケルは兄の真似事をして育った。その兄は父の背中から多くを学んだ。兄弟にとって父は、それだけお手本となる存在だった。
 父は八学署の中でもっとも危険な部署、神醒術犯罪対策部に所属している。神醒術士を相手どるには神醒術が必要と一般的には考えられている。だが父に神醒術の適性はない。この街を守るために、あえて危険な道を選んだ父は、生傷が絶えない生活を送っている。ただそれもすべて自分の役目だからと言って笑う。そんな父をタケルは心から誇る。
 学園都市を守るのは天遊琳一族の役目だ、とタケルは思う。今はまだ学生なので父の手伝いはほとんどできないが、ゆくゆくは自分も父や兄と同じく治安維持のためにこの身を捧げると誓っている。
 そんなタケルのもとに職員室から呼び出しがあったのは、タケルが学園の中等部で授業を受けている最中だった。職員室で手渡された電話を耳に当てると、兄の声が聞こえた。兄は八幡学園都市が水面下で進めるテロ事件の捜査において、父の右腕として働いている。その父が捜査中に負傷し、意識を失った、という連絡だった。